後にヴィルフォールの妻になるルネ。
心優しい美しい人。
ルネはダンテスを裁くために検事として出ていくヴィルフォールに、ただ一人命乞いをする。
「寛大にしてあげてちょうだい。今日はわたしたちの許婚式の日なんですもの。」(アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、モンテ・クリスト伯一)
ヴィルフォールも愛する恋人には弱いらしく、周囲の人々に気づかれぬよう眼差しのみで、その期待に答えることを伝える。
しかし、実際の裁判で窮地に立たされるのは自分自身と知るや、一転ダンテスを罪人とし、自身の保身をはかる。
ここにも伏線があり、この命乞いをしたルネの娘がヴァランティーヌ。
滅びゆくヴィルフォール邸の人々のなかで、唯一ダンテスによって救われる人。
母親の命乞いの因果が後半に描かれる。
この物語の魅力は、この徹底的な因果応報のストーリーだろう。
全ての人に、その人生で行った行動と、その報いが分かりやすいほど簡潔明瞭に描かれている。
悪には徹底的な破滅が、善には晴れやかな栄光が、その結末に用意されている。
まさに、爽快な物語だ。