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asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ7

ダンテスの尋問。

前半穏やかに全てが良い結果となるのではないのかと錯覚するほどに、順調に尋問が進む。

ヴィルフォールさえ、優しく有能な検事に見えるほどだ。

 

ダンテスの申し立ては実に清々しい。

生まれ持った正直さ、和やかな顔。

 

 「いますべての人に愛を持っているこの青年は、こうして自分を裁いている人の上にまで、その溢れるような優しさを感じさせないではいなかった。」※1

 

二十歳前といえば、社会に満ちる醜さや不条理など知らない。

家族のもとで過ごした穏やかな人生がこの世のすべてと思っている頃。

私自身も12歳でこの世の厳しさを知るまでは、この世界の全てに愛情を持っていた。

これは人として生きる上で、誰もが通る事になる試練の扉。

この初期のダンテス、そして、試練後の後期のダンテス。

試練は人を変える。

極めて過酷な試練を経て、ダンテスは変わった。

全てに愛を持っていたものが、全てを信じることが出来なくなる。

何もかも失って、その果てに見るものは。

これも、またこの物語の醍醐味だ。

 

それはさておき、ヴィルフォールは直感的にダンテスの無実を感じ取った。

しかも、彼も自分も許婚式の途中で呼び出されたという運命の不思議。

ルネの願いを叶えやり、このドラマチックな展開をどう語り伝えようかまで考えている。

友好的な言葉と共に、ダンテスを陥れた犯人までも探し出そうと試みる。

それに感謝しつつ、ダンテスが言う言葉と視線。

 

「わたしをねたんでいるものは、たしかにわたしのほんとの敵にちがいありませんから。」そして、こうした言葉を口にしたとき、青年の目にチラリと閃いた光を見て取ったヴィルフォールは、最初気のついた柔和さのかげにはげしい精力のかくされている事実を知った。※2

 

和やかな青年。しかし、その柔和さのかげには強さが潜んでいる。

真に強くなくしては、人に優しくは出来ないものだ。

穏やかで謙虚な人間ほど、深く強く大事を成し遂げる精神力を持っている。

 

全てが順調に進むかに見えたが、

「ノワルティエ」

その一言が出た事により事態は急変。

過酷な牢獄へ。

 

この牢獄の描写をみるといつも思うことがある。

 

今も、この日本にも同じ境遇にある人々が多くいるということ。

 

私もその一人。ダンテスと同じだった。

自由も、時間も、恋人も奪われた。

 

ひきこもりは、部屋という名の牢獄にいるのと同じだ。

みんな自由を求めている。

理想とする人生があるはずなんだ。

 

誰が、君を部屋に閉じ込めたのか。

味方と思っていたヴィルフォールだろうか、君を妬んだダングラールだろうか。

君が部屋に閉じこもることで、利益を得たのは誰だろう?

 

ダンテスのように、いつか抜け出すんだ。

その時のために力をつけるんだ。

荒海に飛び込む勇気を持つんだ。

奪われた物を、時を、取り戻すんだ。

取られたなら、取り返せばいいんだ。

君が欲しいものを手に入れればいいんだ。

 

君を苦しめた者に再会した時、

相手が誰だか気づかないほど、素晴らしい君に変わっていればいい。

それが、最大の復讐だ。

相手が羨むほどの姿を見せてやれ。

 

だから今、知恵と力を手に入れよう。

「復讐」のために。

 

この物語が不滅の輝きをもつ理由。

 

それは、牢獄という最大の苦境で、復讐のための知恵と力をつけた事実。

何もない牢獄で。

学び、体を鍛え、精神を鍛えた。

不撓不屈。

最大の苦境が、「無敵」の自分自身を作り上げるという点で、

 

人生の苦境にあるという幸福。

 

この逆転の発想。

面白い。

本当に。

 

(※1 ※2 共にアレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、モンテ・クリスト伯一)