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asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ10

ダンテスを牢獄へ放り込み、馬車でパリを目指すヴィルフォール

目的は自分と父親の保身、そして、この危機を好機として、国王の信頼を得るため。

国王との会話。ナポレオン上陸の報告があり、ヴィルフォールの発言に千金の重みが加わる。

国王からの絶賛。
危急を告げた忠臣。
自分に対して皮肉を言った人物に対しても擁護するなど、ヴィルフォールは一躍時の人だ。

謙虚で聡明な青年。


しかし、読者は真実を知っている。


国王やその場に居合わせた人々に気づかれぬように視線を左右し、真実が知られはしないかと、冷や汗を流し、赤くなったり青くなったりしている。
無実の青年を牢につなぎ、自分は栄光を得ようと滑稽な努力をしている。


卑怯な男。


真実を知らない者がこの場に居合わせれば、
ヴィルフォールは謙虚で偉大な男だと思うだろう。

しかし、目に映るものだけが真実とは限らない。

立派な行いをしている人物が、本当に偉大かどうか、それはすぐには分からない。このヴィルフォールのように単なる保身の場合もある。

そういったことは日常にも多々ある。
一見冷たいようでも、実際は相手の事を心底思いやって行動する人もいれば、常に笑顔で話しながら、内心毒ずく人もいる。


ささいな事でも、目に映る出来事を、我々は正確にとらえられているだろうか。

私は常々思う。
今日見た出来事は、見たままの意味で捉えていいものなのか。

物語を読むと、出来事や心理を全て知っているから、それぞれの行動の意味を理解できる。これは偽善、これは真実と。だから、面白いとも言える。



しかし、こうして眺めてみると、なんて人間社会は偽善とエゴに満ちているのだろう。正直な人間は少ない。偽善者からは迫害を受け、バカのレッテルを貼られる。(偽善者は偽善が賢い生き方だと思っている。)

偽善者にバカにされることは、善人である証だ。
甘んじて受けよう。

それはつまり、自分の人生の価値観から正直に生きる事を選択するからには、迫害に打ち勝つ強さが無ければならないということだ。

少し横道にそれたが、モンテ・クリスト伯の復讐における、キーワードは間違いなく「力」だ。

若きダンテスは正直だったが、「力」が無かった為にヴィルフォールやダングラールに陥れられた。

その後、牢獄でダンテスは「力」を手にする。

知恵、知識、判断力、決断力、洞察力、忍耐力、そして、肉体的な力。最後に脱獄後、巨万の富、財力を手にして、復讐へと動き出す。

しかし、それはまだ先の話。


今ヴィルフォールの周りには、彼の偽善を見抜ける者がいなかった。


結局彼は栄華を手にする。夢のように儚い栄華を。