asagao’s blog

asagaoの観察日記。

モンテ・クリスト伯 読書メモ13 (ネタバレ含みます。)

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牢獄とは。

変化の無い檻。
会話の無い孤独。

ダンテスは、君?
それとも私?

ダンテスの苦しみは架空のものではなく、
誰もが陥るかもしれない地獄。

人間にとって変化の無い生活は地獄だ。



逆に、変化し続けることができれば、それは歓びとなる。
中々人は、それに気づかない。

少しずつ向上して行く歓び。

変化のない生活が不幸であるなら、
自らの意思で変化し続ける生活は、
幸福ということになる。

閉ざされた牢獄。
何もない苦痛。

無為に過ぎて行く時。

狂おしい孤独。

人間は意識するしないに関わらず、あらゆる繋がりの中で生きている。

その繋がりを断たれてしまうと、人は人でいられなくなる。

まさに、墓石の下の死体に等しい。

ダンテスは、不利益な関わりでもかまわない、
不利益な変化でもかまわないと獄丁に哀願するが、その願いは叶えられず、彼の心は蝕まれてゆく。


ダンテスは全ての希望を失い、祈った。

闇の中で。

やがて、苦しみの後には怒りが訪れる。



誰が!!

いったい何者が、自分をこれほどまでに苦しめるのか。

憤怒の中。
「いかなる恐ろしい責め苦をもってしても、そうしたやつらにたいし、まだまだ優しすぎ、短すぎるように思われた。」※1

「敵に死を与えるということ、それは平安を意味している。だから、残酷に罰してやろうと思ったら、死以外の手段をえらばなければならない。」※2

狂人のごとく猛り狂うダンテス。


ダンテスは怒りと苦しみに悶えつつ、
「沈鬱な、動きのとれない自殺の観念のうちに落ち込んで行った。」※3

怒りの果て、遂にダンテスは生きる意味を見出せなくなり、闇牢の中で死に魅力を感じるようになる。
最大の苦しみのなかで、死の甘美な囁き。
苦しみの終わり。



道は一つ。

餓死。


粗末な食事を投げ捨てる。
小さな窓から。
やがて、惜しみながら。
やがて、一時間もみつめてから。



そして、立ち上がれなくなる。
目が見えなくなった。
心が楽になる。


もうすぐ、死ぬ。

その夜だ。



彼を死の淵から、一瞬にして引き上げ、

「自由」と「生」への執着を蘇らせる、

微かな音が、聞こえて来た。




読んでいる私の心さえ高鳴るような、
この時。

この音。

牢獄に響く、「希望」。

躍動する魂。


※1,2,3,共に、アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、モンテ・クリスト伯一。

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