モンテ・クリスト伯 読書メモ17
風と墓場。

- 作者: アレクサンドルデュマ,Alexandre Dumas,山内義雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1956/02/25
- メディア: 文庫
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運命はダンテスからファリア司祭を奪って行った。
死がそそりたつ司祭のベットで、ダンテスは再び自殺を思う。
しかし、生きぬき、耐え続け、苦しみ抜いてきた今、死の甘言はたちまち打ち砕かれた。
「だめだ。おれは生きたい、おれは最後まで戦いたい。だめだ、おれは自分から取りあげられたあの幸福を取り返さなければならないのだ!」※1
そして、自分を陥れ苦しめた者たちから「忘れられる」ことを恐れた。
「酬いてやらなければ」。
その為にダンテスは死体となって獄をでる道を選ぶ。
ファリア司祭と入れ替わり、死体袋に入るダンテス。
そして、闇牢から運び出される。
何年ぶりだろう、読者さえも久しぶりだと感じずにはいられない、風の描写が入る。
「爽やかな、荒い夜風が身にしみた。北風(ミストラル)だな、と彼は思った。」※2
ダンテスの歓びが伝わってくる。
そして、不安も。
ダンテスは土に埋められると思っていたが、足に重りをつけられ、断崖の上から海へ投げ込まれてしまう。
予想外の埋葬方法だった。
さあ、自由だ。
自由への逃亡が始まる。
まさに、この瞬間から学びに学んできた、あらゆる知識が彼の行動に生かされる。
広い世界へ、文字通り投げ込まれたダンテス。
ファリア司祭の遺言は、「宝を利用せよ」だった。
ここから、縦横無尽の活躍が始まる。
※1,2,アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、モンテ・クリスト伯 二 岩波書店