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asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ50

ヴィルフォールの戦慄
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死んだはずの子供が生きている。
ヴィルフォールダングラール夫人の密会。

不倫の末に出来た子供は死産と信じていた夫人。
ヴィルフォールによって子供が生きていると知らされ、彼女は狂喜する。
しかし、ヴィルフォール自身は身の破滅に怯え上がる。

延々とヴィルフォールの独白によって事の次第が語られる陰鬱な章だ。


砂と枯れ葉が風に吹かれ、カラカラと音を立てる庭の描写。
目を血走らせ、恐ろしい早さで庭を掘り返すヴィルフォールの姿。
しかし、埋めた子供はどこにもいない。

自分を襲った刺客に連れ去られ、孤児院へ預けられた所まで突き止めたことを語る。

そして、この事実を「モンテ・クリスト伯が知っている。」と、警戒を強めるよう示唆する。

ダングラール夫人は、全くそのことに関しては頓着しない。
歯がゆいヴィルフォールの一言が印象的だ。

「おお、人間の悪意は底の知れないものなのです。」※1

ヴィルフォールが言うセリフであることが更に面白さを加える。

他者の苦しみの上に自身の幸福を築き上げてきたヴィルフォール

彼が自身の悪意は棚に上げて、他者の悪意に怯える姿。

自分がやって来た事だから、他者が何をしようとするのかが分かるのだ。

具体的ではないにせよ、「身の破滅」を予感しているヴィルフォールの切羽詰まった様子が滑稽だ。

そして、不用意にダングラール夫人の口からもれる一言。

「おお、正しい神様、復讐の神様!」※2

思わず叫ぶヴィルフォール
罪の意識は根深いらしい。



この二人の狼狽ぶりを予測していたであろうモンテ・クリスト伯

そして、その狼狽の後に、ヴィルフォールがいかなる激しい憎悪をもって自身に向かってくるかも予見している。

ここも面白い。

おそらくこの状況の中で、モンテ・クリスト伯は微笑しながらソファーに身をゆだね、次の計画へと着手するのだろう。
そんな光景が目に浮かぶようだ。

不幸と苦痛によって、鍛え上げられた強さ。
これこそ何物にもかえがたい「真正の美」。


お人好しでは駄目なのだ。
たとえ、人格者であっても利用されて終わる。
騙される。
只、人が良いだけでは勝てないのが人生だ。

知恵、勇気、洞察力。そして、悪事に対する怒り。

厳しさを欠いた優しさは敗北の因。

哀れみは、時に身を滅ぼす。

溺れる犬を助ければ噛まれる。

恩を仇で返す人間はいる。

見抜けなければ、自分が落ちる。

聡明さを、鋭さを持とう。


※1、2
アレクサンドル・デュマ山内義雄
モンテ・クリスト伯」五 岩波書店