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asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ54'

葬儀の後。
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絶望を体現したかのような、全身不随の老人ノワルティエ。

彼の命令により部屋へと導かれたフランツ、ヴァランティーヌ、ヴィルフォール

この章は、心震える。
まばたきのみで肯定否定を使い分け、辞書の力をかりて会話する動けぬ老人。

その老人が崇高なる、この場の支配者となる。

壮絶なる過去の証言。
孫娘ヴァランティーヌを救う為に、自らの最大の秘密を告げるノワルティエ。
父の死の真相を知り愕然とするフランツ。
自身にとっても恐ろしい結果をもたらす秘密を暴かれたヴィルフォール

物言わぬ老人が、周囲の人々に与える衝撃。
言葉の力。
その言葉を操る精神の力。
存在の力。

一人の人間が生き、そこに存在するという事実。
その重大な意味を証明する章だ。

その父の威厳に震え上がるヴィルフォール

人は生きている限り、その存在は他者に影響を与え続ける。

人間の尊厳は、自由か不自由かでは左右されない。もちろん年齢でもない。

意志の力こそが、全てを支配する。

そして、その意志は自由自在だ。

あらゆる可能性を秘めている。

デュマは、牢獄のダンテス、牢獄のファリア、全身不随のノワルティエと、極限の状況に置かれた者を描く。

ここに、彼のメッセージがある。


人はいかに絶望的な状況であっても落胆する必要は無いのだと。


また、この章でフランツの父が陰謀を知っていながら口外しないものは共犯者だと叫ぶ。

これもまた、デュマがこの社会に訴えたい真実だと思う。

自らは手を汚さず、共犯者となる人間がどれほど多いか。

理想と現実。

善と悪。

社会は常に戦場だと思う。

言葉の弾丸が飛び交い、
あらゆる人間の意志の弓矢が体に突き立つ。
隠された罠がある、
見えざる保護もある。

階段を登るように自らを磨き、聡明さとあらゆる力を身につけなければ、敗北の憂き目にあう。
一段上がれば、それまで見えなかった景色が見える。
見えるものが多いほど、人生は有利になる。

誰よりも力をつけ、視野を広くする。

物語を読むように、人生が読めるようになる。

ノワルティエの威厳。
孫娘への愛情。
息子への侮蔑。
父への憎悪から部屋を飛び出したヴィルフォール


ようやく物語はモンテ・クリスト伯のもとへ戻る。