読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ56

エデ
f:id:kazbot:20170106175935j:plain

憤懣やるかたないアルベールを引き連れて、伯爵は邸に戻る。

全ては予定通り。

かすかに聞こえてくるグズラの音色。

(様々な物語に麗しい女性が登場するが、私はこのエデほど魅力的な女性はいないと思っている。)

伯爵は不思議がるアルベールに、コンスタンチノープルの市で買った奴隷だと説明する。

今どき奴隷とは!

そう驚くアルベールに、エデを紹介すると席を立つ伯爵。

王であるアリ・パシャと美しい妻ヴァジリキの娘。

かつては王女であったエデが奴隷として伯爵に買われたことに、好奇心を刺激されたアルベール。

ソファの上に自分の巣といったような場所を作り、足を組んで素晴らしい衣裳に包まれているエデ。

聡明な彼女は、今までに無かった出来事に驚きの目を見開いた。

そして、ここでの一言が心憎い。
おそらくアルベールに分からない言葉として選んだと思われるロマイック語で、伯爵に問いかける。

「御兄弟、お友だち、ただのお知り合い、それとも敵でいらっしゃいましょうか?」※

私にはそれらに相応しい対応の準備がありますと言わんばかりだ。

あたりには、花、絵画、楽譜、楽器。
そして、客人の為に運ばせた水煙管とコーヒーの香り立ち込める部屋。

ただの甘えるだけの幼い女性とは違う、自立した意思を感じさせる女性。

しかも、それは伯爵に対する尊敬や畏敬、娘のような愛情と恋人に対するような愛情を含めた、特別な感情に支えられている。

伯爵の目的も理解している。

しかし、まさか目の前にいるアルベールが、自分の父母を殺害した男、フェルナンの息子だとは知らない。

この場面で語られる、エデの昔語りとそれを聞くアルベール。

その二人を傍観する伯爵と読者。

絶妙な展開。


そして、このあと訪れるエデの仇敵(フェルナン)との再会。

更にアルベールからの決闘の申し込みと、物語は怒涛の展開を迎える。


人間とは面白いものですね。

人間の心理や欲望、執着というものは、時に人生を誤らせる。
栄光栄華は、その人の人生の終わりまで見なければ分からない。

一度栄光を手にしても、その後転げ落ちる人生は敗北の人生でしかない。

逆に、いかに苦難の人生を生き続けていたとしても、人生の最後に栄光を手にするのであれば、勝者と言える。


人としての栄光とは何か。

富か、権力か。

それとも、信念か、希望か。

私は、確固たる人間としての信念と希望を手にした人間こそ、真の勝者と思う。


なぜなら、その心に不幸の悲しみも無ければ、後悔の懺悔も無い。

心に闇を持たないものは、希望を手にすることができる。

他者を踏みつける人間は、心に闇を抱えている。

闇を持つものは、栄光をつかみ続けることは出来ない。

闇が目を塞ぐのだろうと思う。

アレクサンドル・デュマ作。山内義雄訳。モンテ・クリスト伯岩波書店