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asagao’s blog

ほぼ日記と雑記。読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ60

モンテクリスト伯 読書メモ

犯人は。


(読書メモはネタバレ含みます。)



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医師がヴィルフォールに告げた犯人の名はヴァランティーヌ。

さて、順調に思えたマクシミリアンとヴァランティーヌの身の上に、またもや暗雲が立ち込める。

モンテ・クリスト伯はこの事に気づいているのか?

不測の事態に読者の不安も高まるところ。

本当にデュマの心憎い構成に感心する。

登場人物たちは皆、生き生きと物語の舞台を生きている。

まさに、自身の欲望の赴くままに。

利害が絡みあう駆引き。

ヴァランティーヌの運命はどうなるのか。

ここで5巻が終わる。



現実の私は本を閉じ窓外を眺める。

燦々と降り注ぐ昼の太陽。
木々の枝から溶け落ちる雪。
全てが白く塗りつぶされた、見慣れた景色。

静寂の中で暫し黙考する。


富、権力、地位と名誉、愛憎渦巻く世界。
そして、それら全てをなぎ倒す「死」。

デュマは、特に「死」の描写が凄まじい。


この物語のテーマは「復讐」だ。
当然、ラストには仇敵の死が描かれるのかと思う。

しかし、モンテ・クリスト伯はその復讐に「死」を選んではいない。ここが重要だ。

モンテ・クリスト伯にとって「死は安息」「死は逃亡」だった。
彼の牢獄の苦悩を思い返して欲しい。
絶望の中で見いだした曙光が「死」であったことを。「死」の甘美なる誘い。それは「救い」でさえあった。

彼の復讐は、仇敵が卑怯な行いによって手に入れたものを奪い取る事。
そして、本来の姿を万人の前に晒す事。
密かに行ってきた罪を暴く事。


「生きて苦しめ!」

「私に与えた苦しみを私の目の前で受けてみよ!」

そう言っているかの様な、すさまじい復讐劇だ。

普通の人間なら牢獄を出てピストルに弾をこめるだろう。
たった一発で終わる復讐をモンテ・クリスト伯は選ばなかった。

ここに重大な意味がある。

「贖罪とは生きて為すべきもの」なのだ。

「死」という逃亡など「絶対に許さない。」。

この激しい怒り、復讐の誓いは物語の随所に噴出している。

この怒りの果てに何があるのか。

最後まで緊張感を失わない物語がここにある。

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