読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ63

真実を知る。
f:id:kazbot:20170331220158j:plain

はるばるジャニナへと旅立ち、アルベールの父フェルナンの過去を確認したボーシャン。

プライドが高く正義感に燃えるアルベールは、父の無実を信じきっており、早く話せとボーシャンを急き立てる。

この時のボーシャンの一言が良い。
アルベールをなだめつつ、真実を告げようとする前に、その情報の信憑性についての保証をする。
「僕は、すべてを自分の目で見、自分で判断を下そうと思った。」※1
伝聞や、思い込みでは判断しない。
直接聞き、直接見、自分で判断する。
だから、現地へ行ったのだと。

これは人生においても、とても大切な事だと思う。

さて、ここからが面白い。

そのボーシャンによる徹底した確認作業によって明かされた事実。

それは、恥ずべきものだった。
誤報と思われたものは全て事実だった。

あれほど自信に満ち、強気だったアルベールの変化は驚くばかり。

先日の友を友とも思わぬ程の強引さは影を潜め、この事実が公にならないようにと小動物の様に怯える。

ボーシャンが誰にも言わないと約束すると、狂喜して証拠書類を燃やしてしまい、

「おお!なんというりっぱな男だ!」※2
と叫ぶ始末。

傲慢で自信家ほど、その素顔は臆病で小心だ。

過ちを指摘される事を恐れている。

だから、過ちを認めようとしなかったり、素直に謝る事が出来なかったりする。

あれほど無礼な振る舞いでボーシャンを侮辱していながら謝罪は無く、自分に有利に動く事に対しては狂喜する。自分しか見えないアルベール。
それは自分の欲望に従って生きている、無知で愚鈍なフェルナンそのものだ。
ある意味父親の恥ずべき血をしっかりと受け継いでいるのがアルベールなのだ。

デュマのこの皮肉っぽい表現も好きだ。

デュマは、青年らしさ、純粋さ無鉄砲さ、そういったものから青年であるゆえの未熟さ、思慮の足りない行動、意味不明な自信など、本当に人物描写が面白い。

三国志などもそうだけれど、物語の中に様々な人間がいる、それだけで飽きない。
そのなかで光輝く人格を描き出す。
人はいかに生きるべきか。
この物語の醍醐味だ。

そういう人に会いたいとも思うし、そういう人でありたいとも思う。

この章の終わりに、ボーシャンの面白い言葉がある。

「何ひとつきかない人こそ、いちばん上手な慰め手なのさ。」※3

確かに、何も聞かず普段通りに接してくれる人に人は慰められるもの。

辛いときこそ。

そんな人でありたいものです。

※1,2,3,
アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、「モンテ・クリスト伯」六、岩波書店