モンテ・クリスト伯 読書メモ83

不倫の果て。

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ダングラールの失踪。
そして、妻への置き手紙。

夫人は期待と不安を胸に、不倫相手の元へと駆けつける。


ダングラールの手紙を戸惑いつつ開くドブレー。

その手紙の1行目には、ダングラールの皮肉が。

忠実なる妻へ
ドブレーは思わず読むのをやめると、夫人のほうへ目をやった、夫人は目の中まで赤くなった。※1

ダングラールの皮肉は、ここでは正当な権利だ。

不倫を知りつつ許していたダングラール。
その夫に対して不倫を隠そうともせず、ダングラールを客人の前で侮辱し続けた夫人。

彼女はこの手紙の中で、数々の罪を夫から非難される。

しかし、その非難は全く耳に入らない。

読み終わったドブレーに、自分はこれからどうなるのか、視線に期待を込めて問いかける。

自分は「自由」になった。

つまり、この後自分はどうなるのかを教えて欲しいと求めるが、その夫人の「期待」は脆くも崩れ去った。



意外な程落ち着いたドブレーの姿。



無感動で冷淡な言葉が夫人を打ち倒す。


あなたは(夫に)捨てられたのだから、旅行に行くべき、パリを離れるべきだと言い放つ。


ここにきて夫人は自分に言い聞かせる様に呟く。



「捨てられた」


期待は打ち砕かれた。


夫にも、不倫相手にも「捨てられた」。


そして、それをパリの友人、知人、その他の人々に知られる事になるのだと悟る。


ドブレーは、こんな時の為にと自ら壁の内に隠しておいた、二人の事業の収益をテーブルに並べ始めた。

「あなたは金持ち」そんな言葉を貰った後、それらをハンドバッグや札入れに納めた夫人。

何ひとこと言わず青い顔をして突っ立ったまま、これほど金持ちになった自分を慰めてくれるであろうやさしい言葉を待っていた。
だが、それはむなしい願いに終わってしまった。※2

そして、それでもまだ「淡い期待」を胸に抱いていた夫人は、最後にドブレーが見せた冷淡な身振りによって全く愛されていない事を自覚する。

自尊心を盾に、涙をこらえ部屋を飛び出す夫人。


夫人が出ていくや否や、捨て台詞を吐くドブレー。

そして、手帳には損得のメモを残す。

哀れなほどドブレーに夢中だった夫人と、最初から愛など無かったドブレー。

ドブレーにとっては、利用価値のある金儲けの駒にすぎなかった夫人。
当然、ダングラール失踪後の身の振り方など聞かれても答える必要の無い事だったのだ。



ありがちな男女の恋愛観の差だ。


夫人は本気でドブレーを愛していた。

基本的に女性は恋愛に嘘はつけない。

目の前の事実を事実としか受け止められない。
「自分は愛されている。」
「そして、これからもずっと。」

「私はこの人にとって特別な存在。」

「あの人のことは私が一番分かっている。」
そういった感情に目隠しされてしまう。


しかし、男性は恋愛に嘘がつける。
遊び、本気と割りきって恋愛している。


この温度差で、いったいどれ程の女性が真実を見抜けず泣いている事だろう。


自由恋愛の弊害。

自由の対価は大きい。


なんにせよ不倫は、本来の伴侶を侮辱する点において、不幸な結末しかないと断言できる。

不倫をする両者に、他者を尊重するという感情が欠落しているからだ。

だから、一度問題が起こり利害が一致しなくなれば崩壊する。

不倫は契約恋愛と言ってもいい。



ダングラール夫人とドブレー。

利害の上に咲いた徒花。

一夜にして散る。

※1、2、「モンテ・クリスト伯 」七 アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、岩波書店

2018.04.22改

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