モンテ・クリスト伯 読書メモ85 復讐の結末ネタバレ含みます。

砕け散る全て
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幸福と不幸は表裏一体。

今日が不幸だから、明日も不幸とは限らない。
今日が幸福だから、明日も幸福だとは限らない。

ヴィルフォールの幸福の全ては、いかづちの如き一撃によって砕け散った。

幸福とは幻の別名なのか。

ベネデットの告白で検事の地位を失い、
自宅では自らの言葉に従った妻と子の亡骸。
その直後モンテ・クリスト伯の正体を知るヴィルフォール。

この一連の流れは、息もつかせぬ怒涛の展開だ。
このシーンは読むと物語の中へ引きずり込まれる。

とても、途中で読むのを止めることが出来ない。

真実を知ったヴィルフォールは、伯爵を無理やり引き連れ、冷たくなった妻子の転がる部屋へと案内する。

見てくれ!これで満足か?

罪を犯したとはいえ母子の亡骸は痛ましく、我を忘れて部屋に引きこもり蘇生術を施す伯爵。

子供を返せと扉の外で叫ぶヴィルフォール。

やがて訪れる狂気。

庭へ飛び出したヴィルフォールは、狂気の叫びを上げながらベネデットを探し土を掘り続ける。


これが、罪を計画し実行した者の結末。
自己保身の為に、罪を実行した検事の結末。


その結末のあまりの残酷さに、復讐を成し遂げた伯爵自身が狼狽する。

ここまでする必要があったのか?
いや、ここまで計画はしていなかった。

不測の事態に狼狽し。
自らの罪を感じる伯爵。

エデの愛と、エデへの愛が、伯爵を人に戻した。
以前の伯爵であれば、この狼狽はなかった。

しかし、伯爵の自責は必要ないのだ。

検事の罪を数える。

赤ん坊を生き埋めにした。
ダンテスを冤罪で投獄した。
妻を自己保身の為自殺に追い込んだ。

すべて、「自分がした事」だった。

因果応報なのだ。


伯爵の復讐は、ただ赤ん坊を生き埋めにしたことを「暴露」しただけだ。

彼の妻に薬学の知識を僅かばかり授けただけだ。

知識を与えることは罪ではない、その知識で罪を犯した者に罪がある。

刃物を作るものに罪はなく、刃物で犯罪を犯す者に罪があるのと同じだ。

してみれば復讐とは、悪事を暴露する事で完了する。

悪事は暴露されるべきなのだ。

悪事を行った事は、万人に知られるべきものだ。

悪人に対する最大の制裁は死刑ではない、何をしたのかを暴露する事なのだと思う。

人知れず罪を犯すが故に。